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徳次は人の好い、いかにもさう信じこんだやうな眼で二人を眺めた。
練吉はそれなり黙つた。
二人は間近かで眩まぶしげに眺め合つた。そのまますれちがつて、二三間行きすぎた頃、房一が見送り気味にふりかへるのと、相手が車の上から首をねぢ向けるのと同時だつた。そのはずみに男はひよいと地上に降り立つた。
房一はそれに目をとめていたが、急に強い口調で、
自動車が動き出した時、練吉は唇のはしをびりびりさせ、あの切れ目の顔に何かしら水をかけられたやうな表情になりながら、
徳次は慌てた。
「その姿は見えないのですが……。」
「いや」
そこへは、案内も乞はずに、小谷吾郎が気がるに裏口から入つて来た。
「さうですか」
遠くの方で誰かが呼んでいた。
「さうです。相談があるからと云ふんで帰つて来たんですが、僕なんか何も問題はありませんよ。返すものがあれば、いつでも返します。何もないんですよ。家と、田地が少し。それも抵当に入つていますよ。僕がしたわけぢやない。兄貴が選挙の費用だの何だので金が要つたのでせう」